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福岡地方裁判所 昭和33年(わ)1082号 判決

被告人 山下三郎

大九・一〇・一四生 元銀行支店長

主文

被告人を懲役六月に処する。

但し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

被告人より金九万三千円を追徴する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和三十一年八月二十日頃より昭和三十三年九月頃まで福岡市大字住吉花園町千六百十三番地株式会社福岡相互銀行柳橋支店長として勤務し所謂相互掛金契約の締結、その掛金、預金定期積立の受入、資金の貸付、手形の割引等同支店の行う業務一切を総括する職務に従事していたものであるが

第一、(一) 昭和三十二年八月二十四日頃同市上今川橋通り二十六番地の当時の被告人自宅において同支店の顧客である西日本コンソリデーテツトオイル製品販売株式会社福岡支店長轟明が同日前記柳橋支店より五十万円の融資を受けたことに対する謝礼並びに爾後の融資についても便宜を得たい趣旨のもとに供与するものであることの情を知りながら現金一万円の供与をうけ

(二) 同年十一月六日頃前記自宅において前記轟が同年十月二十六日前記柳橋支店より五十万円の手形貸付をうけたことに対する謝礼並びにその頃申込んでいた四十万円の融資につき便宜を得たい趣旨で供与するものであることの情を知りながら大丸百貨店商品券一枚(額面五千円)の供与をうけ

(三) 同年十二月三十日頃前記自宅で前記轟が同月二十八日前記柳橋支店より二百五十万円の融資をうけたことに対する謝礼並びに爾後の融資についても便宜を得たい趣旨で供与するものであることの情を知りながら現金二万円の供与をうけ

第二、同年八月十七、八日頃前記自宅において宮本昇より同人が前記柳橋支店より融資をうけたことに対する謝礼並びに爾後の融資についても種々便宜を得たい趣旨のもとに供与するものであることの情を知りながら岩田屋商品券一枚(額面一万円)の供与をうけ

第三、(一) 同年十二月二十六日頃同市渡辺通り一丁目附近路上において土井貞次より前同趣旨で供与されるものであることの情を知りながら東京銀行福岡支店振出額面各五千円の贈答用小切手二通を受けとり

(二) 昭和三十三年八月初頃前記自宅において前同人より前同趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金五千円の供与をうけ

第四、同年七月初頃前記自宅において帆足幸康より前同趣旨で供与されるものであることの情を知りながら福岡銀行本店振出額面二万円の贈答用小切手一通の供与をうけ

第五、同年八月初頃前記自宅において中野寛より同人がその頃同支店より四百万円の融資を受けたことに対する謝礼の趣旨で供与するものであることの情を知りながら現金一万円及び洋服生地一着分(時価三千円位)の供与をうけ

以て夫々職務に関して賄賂を収受したものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(法令の適用)

判示各所為はいずれも経済関係罰則の整備に関する法律第二条、附則別表乙号第二十四号、金融緊急措置令第八条に該当するところ以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条に従い犯情最も重い判示第一の(三)の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し但し諸般の情状刑の執行を猶予するを相当と認め同法第二十五条第一項を適用し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予しなお前記経済関係罰則の整備に関する法律第四条により判示収受に係る賄賂はこれを没収すべきところ既に費消等して現存しないからその価額合計金九万三千円を被告人から追徴することとし訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い全部これを被告人に負担させるものとする。

そこで主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺桂二)

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